「よし…いい?恨みっこなしだよ?」
私たちはその時まさに戦士だった。
猿飛さんはいつになく真剣な表情で、山崎くんはミントンのラケットを握り締め、土方くんは瞳孔も開かんばかりの勢いで、そして諸悪の根源・沖田総悟はと言えば…







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ごみ捨てじゃんけん






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「ちょっと待ってくだせェ」

私たちがまさに手という名の剣を振りかぶろうとした瞬間、その瞬間、沖田くんが口を開いた。

「こんなのが行きゃあイイんじゃねーですかィ?」

一瞬凍りつく場…けど、ゴミ捨てなんてめんどくさいことしたがる人なんて一人もいない。ましてやこのメンバーだよ?

「ちょ…待、ふざけないでよ!私、絶対やだ…」

言いかけたその時、私は気付いてしまった。その場がお前でいいんじゃねーの、むしろお前が行けよ的ムードになっていたのは。

「どうせお前もゴミなんでィ、だったらゴミ捨てるついでに捨ててもらって来いよ」
「ひっど!っつーか沖田くんのその一言で私の人生些細だけど狂うんだぞ!くそ、そういうの考えろよ!あと傷ついた!かなり傷ついたんだから!」
「細けェこと気にするんじゃねェやい…あーでもも捨てるとなるとやっぱりゴミ捨て係が必要なんですねィ…」
「ちょっとォオ!そのまま話を進めないでよ!」


私の静止もなんのその、私抜きで話を進める一同。私が尚も抗議しようとすると、猿飛サンがこっちを振り返って、凄い剣幕だけれども静かに私に言った。
「そうやってイジ(メ)られるそのポジション、本来ならそこは私のものなの。大人しく譲ってあげてるんだから嬉しく思いなさいよね。」
何て傲慢な話なんだろう、つーか譲って欲しくねえっつーの。聞こえないようにそう呟いて私は溜息をついた。
もう諦め半分の私を尻目に、まだ一同の話はまとまらないらしい。あーでもないこーでもないと、皆が皆、面倒から逃げようと必死だ。
例えば土方くんはといえば山崎くんをちらっと見たかと思えば(ちなみに山崎くんはその視線に気付いてさっと視線を逸らした)

「オイ山崎ィ」
「はい…」
「お前行って来いや」
「狽ヲえ、ヤですよ…俺ミントンのアレとかあるんで」
「アレって何だァ?あ?俺だってマヨネーズのアレとかで忙しいんだよ。テメー行け。そしたら丸く収まンだろうが!」
「ちっとも丸かないですよ!つーか土方さんこそ何なんですか、アレって!」
「アレったらアレじゃねーか!あの…新品のマヨネーズ開けたら銀色の蓋ついてんだろうが!アレ取っとかねえとマヨネーズだそうとした時に出なくて『ちょ…これ出ないじゃん!どうなってんの!?どうなってんのォ!?』ってなるだろうが!あーそうなったら最悪だ。想像しただけで最悪だ…」

マヨラーにも程があるだろう土方。


その後、何分たっても会議(?)は終わらず、私はそうっと帰ることにした。
あれだけ論議に夢中になってるんだ、私が居なくなってもきっとぎゃあぎゃあ喚きつづけることだと思う。
私は静かにまとめた荷物を持って、後ろの扉からそろりと教室を出た。








あたしが居なくなったことに一同が気付くのは、1時間も経ってからのことでした。