「とうしろう」
「あ?」
突然が俺の名を呼ぶ。くわえかけた煙草を諦めて、俺は気のない返事をする。は俺の手をじっと見て、なお且つ膨れっ面だ。
「なあに、この傷」
そして突然、手をとられる。もちろん、煙草を持っていない方の手。そこにはこの間の任務でついた傷があって。
やましい事など何もないので、俺はありのまま説明する。膨れっ面だったの顔が、どんどん険しくなっていって。
「、眉間に皺いってんぞ。 怖いんですけど」
「じゃ、この傷は?」
「…無視かよ。 つーかそれ、前も言ったろ。」
完全にご機嫌斜めモードの俺の女は、「しーらない!」と唇を尖らせて、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
「あ、っそ」すぐに機嫌を直すか、もしくは寂しくなって俺にからみついてくることは分かっている。だから、あえて冷たくする。俺もそっぽを向く。
さっき諦めた煙草をくわえて、煙を何度か吸ったり吐いたり。がちらちらとこっちの様子を窺っているのが、手に取るように分かる。
「とうしろうってば!」
「あんだよ、うっせーな」
…ほーら来た。面倒くさそうにの方を向いたら、完全に不機嫌顔のが、無理やり俺の顔をつかんで、無理やりの方に向けた。
「もう、怪我しないでよね」
「はあ? ンなの無理に決まってんだろ」
「しないでよね!」
「…なんでだよ」
あまりの剣幕に、つい理由を聞いてしまう。俺の顔を掴んだままのが、急ににっこりと笑った。
「十四郎はわたしのものなんだから、わたしの知らないとこで、傷なんてつけないで」
すべては君のもの
(09/02/22 要はツンデレってやつですよ…ね?)