誰もが、自分の権利を求めて必死だった。
国を変える戦いだ、そして、自分を立てる戦いだ。
誰も譲らない、譲れない、矜持のぶつかり合い。

ただ、剣と剣の重なる音が、無機質に響いていた。



、無事か!?」

瓦礫の陰でうずくまるあたしに、銀時が声をかける。
その顔は必死で、額に巻いた白いはちまきに、
それから、砂のついた銀時の肌に、
点々とついた、紅。

「…銀時、血ぃついてる」

「ん、ああ」

頬をぬぐうその手も、紅に染まっていて、
「そんなんじゃ取れないよ」あたしは思わず手を伸ばした。

「すごいね、皆必死だ」

「そりゃァなあ…巻き込んで悪かったな」

「んーん、あたしはたまたま居ただけ。銀時悪くないよ」

「そうか」

「銀時、あんなにいっぱい居た敵、ぜんぶ倒したの?」

「ああ…いや、全部じゃねーけど」

「そっか、スゴイね…」

白かった銀時が汚れていくのを隣で見ているあたしは、なんだかそれがとても怖くて。
けど、『いつになれば終わりがくるの?』そんな問いを投げかけることなんて、出来なかった。

「スゴかねえよ。 、今のうちに逃げろ」

「うん、…銀時」

銀時が首を傾げる。
あたしはもう一度、銀時の頬に手をのばして

「どうか、無事で戻ってきてね」

「ったりめーだろ」


あたしは、恐れていた。
ただ銀時の輝きが失われることを。失われていくことを。
それを恐れながら、あたしはどこかで信じていた。
決して消えない、鈍く鋭い、その銀色の光を。







どうか消えないで

(08/03/01 白夜叉時代。ずっとあっためてたネタ)