(わがまま、言ってごめんね)
「だからお前、仕事だっつってんだろ」
そう言う十四郎の声は怒気をはらんでる
あたしは思わずびくり、と肩を震わせる、けど、怯まない
「だって今日はデートするって、ずっと前から約束してたもの。」
あたしは今までずっといい子にしてた
あなたのお仕事、忙しいのちゃんと知ってたから、我慢してたんだよ。
でもね、寂しかったんだよ
構って欲しかったの
あなたがずっと、心を痛めてくれてるのも知ってた
その優しさに気付いてから、もっとつらくなった
あたしのさみしさがわかるなら、 もっともっとかまってよ、って
あたしがわがままで、自己中心的で、最低の女でもあなたはあたしを愛してくれるのか
あなたの愛を確かめたかったの
「悪ィって。 絶対埋め合わせすっから、な?我慢しろよ」
わかってる
あなたが口先だけで謝ってるわけじゃないってわかってるよ
ちゃんと埋め合わせしてくれるってことだって 知ってる
知ってるんだ、よ。
「やだ、 やだよ、十四郎」
「な、。頼む」
あたし、そんな十四郎の優しさに甘えてたのかもしれない
だからあんな 傲慢なこと、
傲慢なこと。
「やだ、十四郎のばか。いつもそうじゃない!」
「今日はデートするって、約束、したでしょっ…たまには守ってよ!」
気がつくとあたしの手はいつのまにか十四郎の頬を打ってた。
(ごめんね、痛かったよね。 ごめんね)
「仕事、仕事って そんなにすきなら 仕事と付き合えばいいじゃない」
「てめェ、いい加減にしろよ」
キレられたって仕方ないことをあたしは言ってた。
謝るつもりだったのに、あたしからこぼれたのは
謝罪じゃなくて、涙だった。
「もういい。
十四郎とは、一緒にいたくない」
(ぶったりして ごめんね。
泣いちゃって ごめんね。
どれだけ後悔したって足りない。
あたしは ほんとにばかだったね)
あなたを遠ざけてしまったのはあたしの愚かさ
そのあたしは まだ あなたを愛しいと感じている。
死ぬまで絶対忘れない。
もうあたしの手にはきっと入らない あなたの笑顔や愛、それに 優しさを。
ごめんね
(06/08/14 aikoの「えりあし」イメージで。)