夜もすっかりふけたころ
うちの電話が、ジリリリ、と古典的な音で着信を告げた。
「はい、もしもし」
寝ぼけた頭で辛うじてそう応対する。聞こえてきたのは、耳慣れた声。
「か?」
「…銀ちゃん、どうしたの?こんな時間に…」
「もしかして起こしちゃった?悪りーな…。 どうしてもの声が聞きたくて」
いつもなら、そう言って電話するのは私の方。
眠れない夜に聞きたいのは銀ちゃんの声。
銀ちゃんも私の声を聞きたい、と、そう思ってくれたんだろうか
いつも強くてやさしい銀ちゃんが 人恋しくなって 私を頼ってくれたということなのだろうか。
「眠れなかったの?」
「…ま、そんなトコ。 でもの声聞けたし。ちゃんと寝れる。 ごめんな、おやすみ」
「待って銀ちゃん、待って。私、今すぐ行くから、待ってて!」
「え、ちょ、…」
そこで私は電話を切る。慌てて寝間着を脱いで着替える。
銀ちゃんが寂しい時は、私が支えてあげたい、包んであげたい。
だからこそ私は、今、銀ちゃんのところへ行かなくちゃいけないんだ。
銀ちゃん家の前で、銀ちゃんは立って待っててくれた。
笑って手を挙げてくれた銀ちゃんに走り寄って抱きしめる。頭の上で、うおッ、て言う銀ちゃんの声が聞こえて、私はつよくつよく銀ちゃんを抱きしめた。
「眠れないなら眠れないって言っていいんだよ、寂しいなら寂しいって言っていいんだよ。強い銀ちゃんはすきだけど、無理して強がる銀ちゃんは、私、嫌いだ」
「…違、寂しいとかそんなんじゃねーよ。
ただ、が俺の腕から逃げていってしまいそうな気がして 居たたまれなくなっただけ」
ありえない なんてばかなことを言うんだろう、この人は。
「私はもう銀ちゃんのもので、銀ちゃんは私のもの。逃げるなんてあり得ない。そうでしょ、だって私、銀ちゃんに会いたくて、こんな夜中に飛んできたんだよ」
そして、これからもいつだって いつだって飛んで来れるよ。
あなたが望むのならば
FLY TO YOU
(06/09/16 弱い銀ちゃんにもきゅんときます)