朝起きると枕の横に小さな可愛い箱があった。
あたしはそれを見てやっと今日がクリスマスだってことを思い出した。
そしてその箱は確実に、もう間違いなく、ひゃくぱーせんと銀ちゃんからのプレゼントだった。

「あああぁぁぁ…」

あたしはもう唸ることしかできなかった。
けどいつまでも唸ってるわけにもいかない。寝癖だらけの頭を力任せに撫でつけて整え、慌てて服を着替え、銀ちゃんへの御返しを調達しようと寝室から出かけた、その時。
「へぶっ」
あたしは何かにぶつかった。

「おー、目ェ覚めたか?」

やる気のないふてぶてしい、それでいてちょっとせくしーな声。
ぶつかったのは、確実に、もう間違いなく、ひゃくぱーせんと銀ちゃんで(しかもいつもの二倍はニヤついてる)。

「ああ、はい、あの…おはようございます。」

咄嗟にあたしは目を逸らして、冷や汗をダラダラ垂らしながら青い顔で答えた。

「…なんだその顔、もしかして体調悪いとかかァ?あ、アレか、今流行りのノロウィルスか。っんだよー、だからちゃんと手洗いうがいはしろっつったろー」

「いやそんなこと言われた覚えないんだけど。っていうかあの…あの、もしかしてあの何とも可愛らしい小箱は…」

「あー?プレゼントに決まってんでしょーが。何ぃ?ちゃん照れちゃってる?」

ニヤニヤと笑ってあたしを見るその顔。いいっていいって御返しなんて、俺の気持ちなんだからさァ。その顔が、その声が、その言い方が、確実にもう間違いなくひゃくぱーせんと御返しを期待しているゥウウウ!

「ごめんあの…あのなんていうかあたし今日が恋人たちの一大イベントだってことをすっかり忘れててなんにも用意してないんですけど…あの…ごめん…」

もうこうなったら色仕掛けしかないよ。ない色気振り絞ってあたしは精一杯しおらしく俯く。そして上目がちにカレシを見る!…って雑誌に書いてあったんだよね。
どうなんだ、これどうなんだ、どうなる?どうなるのあたしィイイ!?

ちらりと、上目遣いのままで銀ちゃんの顔色を窺い見るとどうやら銀ちゃんは雑誌のテクなんかでイチコロらしい。呆然っていうかなんていうか…とにかく固まってた。

「…許してくれる?」

「ゆゆゆゆ許すも何もお前、言っただろ。御返しはきき期待してねぇってよォ…!」

あたしの問いかけに銀ちゃんは明らかに挙動不審。雑誌テクにどぎまぎしたのに加えて、やっぱり、あたしからプレゼントないのはショックなんだろうな…。




「あの…今すぐ用意できそうなもので、欲しいものとか…ない?」

やっぱり折角準備してくれたのに(しかも演出までしてくれて。ベタだけど。)なんにも返せないのは気が引ける。今から御返しにケーキ何個焼いたっていいくらいの勢いであたしは問いかけた。


そしたら銀ちゃんが にやり、笑って。

気付いたらあたしは床に寝転がってて。上を見ると天井じゃなくて銀ちゃんの顔。

「ちょ…ちょっとォ!どうなすったの銀ちゃ…」

「…が欲しい」

「え?」






「ガキが欲しいな。俺とお前の」










「…銀ちゃん、それ一年かかっちゃうよ?」

かまわねえよ、銀ちゃんが笑って、柔らかい銀色の髪があたしの首筋に触れた。








愛しいきみの分身を

(06/12/20〜26までの拍手お礼夢。めざせエロカワ。)