今日は年に一度の大掃除の日。
普段はどこかのぐうたらだめ人間のせいで掃除なんてロクに出来ないけど
今日こそは手伝ってもらいますから、ね、銀ちゃん!
「ー、あとドコ拭けばいいアルカ」
「さーん、階段の掃除終わりましたよーっ」
「わー神楽ちゃんに新八くん、ありがとっ!そだな…じゃあ二人で台所のお掃除してくれる?」
「「はあいッ」」
ぱたぱたと二人が指示された通り、めいめいの用具を持って駆けてゆく。普段から買い物してくれたりだとか洗濯手伝ってくれたりだとか、意外にも手伝ってくれるとは思ってたんだけど、大掃除ともなるとほんとに手伝ってくれるのがありがたい。
台所から、悪戦苦闘しながらも掃除してくれてる声が聞こえてきて私は思わず微笑ってしまう。ソファも机も全部どかした居間の床を磨きながら、なんだか家族みたい、あたしはそう思った。
鼻歌まじりにあたしは床を磨きつづける。掃除は大変だけど、部屋が綺麗になるのは嬉しい。普段磨けないようなところもがしがし磨く。
でもあたしはふと思い出した。ここに居るはずなのに居ないその人を。ここの主のくせにどこかへ消えてしまった銀ちゃんのことを。
「……ねえ神楽ちゃん、新八くん、銀ちゃんドコにいったか、知らない?」
数秒後、あたしは雑巾を握り締めて台所に立っていた。無論、銀ちゃんの居場所を突き止めるために。
「…さぁ、定春の散歩にでも行ってるんじゃないですかね?」
「大体あんなグウタラ、居たってしょうがないアル。手伝いなんて私一人が居れば十分ネ!」
「んー…確かに銀ちゃんなんて居たって邪魔になるだけなんだけど、や、でも、何かの役に立つかもしれないでしょ?」
「人聞き悪ィこと言ってんじゃねーぞ。なんだァ?銀さんの居ない間に皆で悪口大会かァ?ちくしょう、イジめる側はイジめられる側の身にもなれっつーんだよ」
噂をすればなんとやら、現れたのは当の本人で。不遜極まりない物言いにあたしは思わず食ってかかって、それから銀ちゃんの腕をつかんで言った。
「原因つくってんのは銀ちゃんでしょうが!ま…帰ってきたのは褒めてあげる。よし、じゃあ一緒に居間の床を磨こう」
つかんだ腕を自分でも驚くくらい強引に引っ張って、無理やり居間に連れて行く。
まだ状況が飲みこめない、そんな表情を浮かべている銀ちゃんの手に雑巾を握らせて、さあ銀ちゃん、馬車馬のように働いてね。とあたしは笑った。
んだよコレ、罰ゲームか何かァ!?そんなことを叫ぶ銀ちゃんとは反対のサイドの床からあたしは磨きはじめる。はいはい文句言わないのー、そう言って適当に銀ちゃんをいなしつつだ。
「なあー」
「んー?トイレとかって逃げ様としてもだめだよ。行かせないから」
「ひっど、何、SMプレイに目覚めちゃったとかそういう…?やっべえな、俺、身ィ持つかな…」
「違う!ほんと、いい加減にしないとそのホクロひきちぎ…じゃなくて、いい加減にしないとぶつよ?」
何かとうだうだ食らいついて掃除から逃げたい銀ちゃん、バカみたいなことばっかり言う銀ちゃんにちょっとイラっとしたあたしは立ちあがって手を振りかざす。いつでもバッチリぶてる体勢だ。
「すいませんごめんなさい(顔がマジだよオイ…!)、いや、そういうことが言いたかったんじゃねーんだけどな…」
「何、手短に済ませてね」
「愛してる、付き合って」
余りに急なその告白に、あたしは真っ赤になって、そんな顔を見られたくなくて俯いた。
ぴかぴかに磨かれた銀ちゃん側の床に、いつもみたいにかっこよく笑った銀ちゃんの笑顔が写っていた。
かがやき、きらめき
(06/12/26〜07/05/04までの拍手夢。馬車馬という単語に爆笑。)