わたしのために唄ってほしい
ブラウン管のむこうの あなた。
彼がテレビに出始めたのは最近のこと。
特別いい歌ってわけじゃない
それでも人気が出たのはきっと
彼に何か、独特の人を惹きつけるモノがあるから
それが彼の魅力で、
銀色に輝く、彼の光なのだろう。
他でもない、彼はわたしの恋人なのだ。
彼が道端で唄っていたときから私は彼の恋人。
彼が売れるのは嬉しい、けれど
同時に彼が遠くへ行くようで寂しい。
私のためだけに唄っていてほしいのに
彼が今、唄うのは私以外の不特定多数のため。
そんなんじゃやだ。
これじゃあなたの声がきこえない
あなたの 声がききたいよ、 銀ちゃん。
次第にディクレッシェンドがかかる音楽。歌が終わる。
ブラウン管の向こうで、彼がマイクをつかむ。
醜い嫉妬かもしれない。そんなことは解ってる。
それでも、ステージの上で溢れんばかりの歓声とライトの光を浴びる彼を見てるのが
悔しくてしょうがなかった。
(銀ちゃんは私のものだ)
こう叫びたくて仕方なかった。
「この歌を」
彼がマイクに向かって喋る。
私は彼を見つめる。見つめるだけで想いが届けばいいのに
傍にいたって届かないのに、こんな遠くじゃ何も届かない、伝わらない。
「捧げます、 愛するに。」
「オメー、今きっとテレビの前で『こんなの私の銀ちゃんじゃない』とか言ってんだろうけどさあ、勘違いすんなコノヤロー。どこまでいったって俺はお前ンだ。嫌がったって離れてやんないから覚悟しとけ」
すごく銀ちゃんらしい言葉だった。
こんなに醜い私を見抜いて、それでも尚愛する、と、私のものだと。
そう言える銀ちゃんはやっぱり、輝かしい人だと
心の底から、そう感じた。
その歌を
(06/09/11 企画:GTISDK!!さま)