空には大きなオヒサマ、あたしたちを照らす。
ガッコの屋上でメイッパイ背伸びして、これから始まる高校最後の夏休みを、あたしはツヨく噛み締めた。

「高杉ィ!」

何度も言うけどココは屋上。終業式をサボれる絶好のポジションで、アイツはきっとココに居るワケで。
思いっきり声を張り上げると、どこかから「うるせェ」と声が聞こえて、小声で呟けばイイのに、ワザワザあたしに聞こえるような声で言う辺り高杉はスゴくイイヤツだとしみじみ思う。

「ハイ問題デス。今は何の時間でしょう?」

自分のことは棚にあげて、そんな質問を投げかけながら高杉を探す。と言っても、こんなダダっ広い空間に隠れられるところと言えば、きっと階段のある建物の陰になるあの辺だろう。ダヨネ、そこなら涼しいもんネ。
わざとゆっくり歩いて高杉の返事を待つ。いつも高杉は思った通りの返事をくれて、そういうトコがスゴく落ち着く。

「昼寝に決まってんじゃねェか」

そういう声に笑いが混ざっていて、あたしも思わず笑顔になる。ぶぶー、ハズレ。そう告げて建物の陰を覗くと、ヤッパリそこに高杉が寝転んでいた。

「高杉クン、終業式に行かないと、またお説教食らいますよ」

「んなモン聞き流しゃいーンだよ、つか、てめーもだろうが

「仰る通りで」

二人で視線を合わせてニヤっと笑って、あたしは高杉の隣にしゃがむ。ココは涼しいネ、呟いたけど返事は無かった。
それからしばらく沈黙、高杉が不意に「アー、明日から学校ねーと思うと清々すんぜ」と呟いたので、一度頷いてから「…でも寂しくナイ?こうやって会えなくなっちゃう」と首を傾げたら、くだらねーと真面目に嫌な顔をされてしまった。
青い空を入道雲が我がモノ顔で占領して、その隙間から眩しい光が差し込む。夏だネ、あたしが言って、暑ィな、高杉が言った。

「高杉ィ」

「うるせーっての」

なんだかんだで名前を呼べば返事してくれる、高杉はやっぱり優しい。

「あたしは寂しいヨ」

「…あ?何が」

「高杉に会えなくなるのが寂しいヨ」

へェ、興味なさげに、カナーリ適当な相槌を打ってから高杉はソッポを向いて。その仕草が照れ隠しだというコトを、あたしはよーく知っていた。
高杉だって寂しい癖に、呟いてみても、コッチを見ない高杉は返事すらくれない。高杉ってば、何度呼んでも返事がナイので、こうなったら、勝手にイロイロ話すしかない。

「海に行こーね」

「…」

「観たい映画もある」

「…」

「宿題、あたしヒトリでは終わんナイよ。」

「…」

「ねえ、高杉」

これで何度目だろう。というか、この学校の中で、いや、日本中、つか世界中で、あたしは「高杉」という名を一番多く呼んでる自信がある。
だんまりを決め込んだ高杉を見据えて、あたしは呟いた。うっとうしいくらいの蝉の声に紛れない様に、ジリジリと地面を焼く、夏の日差しに負けないように。それから、高杉ダケに聞こえるように。

「あたし、高杉のコト、好きだからネ」

ふ、と高杉が笑ったのが見えた。「そーかよ」高杉があたしの少し汗ばんだ手を引いて、顔が近付いて。

夏はコレから。
高校最後の夏、そして、キミと付き合いだしてハジメテの、夏。














白昼の告白

(08/10/01 たくさんのありがとうを
High school High life! / PINN / そして読んでくれた貴女)