骸はその時あたしの目の前に立っていた。
あたしの想い人としてでなく、あたしの恋人としてでもなく、ただマフィアを倒す、そのために。
どこぞのマフィアのボスを炙り出すために並盛中で喧嘩の強い人を虱潰しに倒してる、そんなことを骸の口が言った。
あたしは骸がすきだ。千種も犬ちゃんもだいすきだ。だから危ないことしてほしくない。怪我する姿なんて見たくない。
しかも、あたしの勘が告げていた。『きっと3人は酷い怪我をすることになる。もう逢えなくなるかもしれない。』って。
逢えなくなるなんて真っ平だった。何度もいうけどあたしは骸がすきだ。骸がだいすき。愛しい。離れたくない。
言いたいことは山ほどあるのに、何とかして骸たちを止めたいのに、あたしの身体はあたしの言うことを聞いてくれなかった。
「…、心配しないで下さい。」
何も言えない自分が憎らしくてしょうがなかった。困ったように笑う骸を見てあたしは、あたしは。イツの間にか流れ出した涙をどうしても止められなかった。
骸が苦しそうに笑って、あたしの頬に手を伸ばして、涙の筋を拭った。あたしは小さく首を振って、ヒリヒリと痛む喉からまだ音が出ないことに焦った。
「僕たちが負けると思うんですか?」
「ちがッ…ちがうけど…っでも、でも…」
「大丈夫」
大丈夫、力をこめて言った骸はいつもの骸で、でもいつもの骸じゃなかった。
その右目には得体の知れない光が宿って、尚更どこかに行ってしまったみたいで怖かった。
かならず戻ってきます。のところに。
そう言ってあたしの肩を抱いた骸の手は、ひどく冷たかった。
冷えた手と鈍い煌き
(07/03/12 リボーンかよ…!と我ながらつっこむ。)