付き合ってるなんて形だけで愛されてないんじゃないかって不安になって、あたしはあえて意地を張って。
意地を張って虚勢を張って、『愛してるなんて嘘です』って言われた時のショックを少しでも減らそうとした。
あたしは自己中心的だから、あたしのことしか考えられないし。 馬鹿だから、今のことしか考えられないし。
その虚勢が、その意地が、またあたしを不安にさせることなんて気付かなくて。
ただあなたに嫌われることだけが、要らないって言われることだけが、あなたから離れることだけが怖くて あなたが愛しくて愛しくてしかたなくて
でもそれを声に出すことができないままで。



「銀ちゃんなんて居ない世界に生まれればよかった。
 そしたらこんなに苦しいことも、悲しいこともなかったのに。」

「このまま 銀ちゃんの居ない世界へ行けたらイイのに」



言ってしまってからきづいた。あたしは言ってはいけないことを言った。
きっとこれは銀ちゃんを酷く傷つけてしまう。

謝らなきゃ。




でも『ごめん』 この言葉が喉につっかえて中々うまく出てこない。
長年意地を張りつづけた所為か あたしの根性はひん曲がってしまって。
謝るなんて、そんな。 謝りたいのに、心のどっかが謝ることを拒否している。

こんなんじゃだめだ。失いたくない。あなたを失いたくないよ、銀ちゃん。


「…、 お前それマジで言ってる?」


銀ちゃんの双眸がすう、と細まる。これはあたしを見定める目。あたしを咎める目。
この目をあたしは見たくない。反射的に俯いたら、あたしの瞳から、涙がひとつこぼれていった。



「ちが、う…。」


辛うじて搾り出したのはこんな言葉。ちがう、ちがう。謝らなきゃ。
どうして出ないんだろう。たった3文字だ。長くたって6文字、たったそれだけの言葉。
たったそれだけなのに。


 ど う し て こ ん な に 重 い ?



「ちが、ちがう…違うの、銀ちゃん」



傷つけてごめん。意地はってごめん。今までごめん。
涙が溢れて止まらない。こんなんじゃ余計に銀ちゃんの顔なんて見れない。
あたしはいつまでたっても意地はったままで いつまでたっても謝れなくて いつまでたっても銀ちゃんを縛りつけて、傷つけて。



「…、もういい」



ふわり。 銀ちゃんがあたしを抱き寄せる。
ほら、銀ちゃんはこんなにも素敵なヒト。あたしなんかには勿体無いヒト。輝いてて、誰よりも愛しいヒト。





「すきだ、。 だから、頼むから、どっか行くなんて言うなよ」





ああ、あなたのその言葉があたしを闇の淵から救い出してくれる唯一の光なのかもしれない。
素直じゃないあたしは この腕の中でなら素直になれるだろうか。











このまま君の居ない所へ

(06/09/21 企画:I am not obedient.さま く、暗くてすみません…!)