「おかえり」
スーパーの袋を両手いっぱいに抱えたあたしに
銀ちゃんがこう声をかけた。
「ただいま」
お互いへらっとひとつ笑って、銀ちゃんがあたしの両手から、重い荷物をとってくれる。
「うわ、重。よく持てたなァ」
そう言いながら居間へ向かう銀ちゃんの後を追って、あたしも居間へ。
「もう慣れっこだよ、神楽ちゃんはいっぱい食べるし、銀ちゃんのいちご牛乳も買わなきゃでしょ?
滅多にこれないからさ、たまに来た時くらいちゃんと補充しときたいし」
「ああ…言やあついてってやったのに」
ソファの上にどかりと置かれた大荷物の中から、生物を取り出して両手に抱える。
台所の冷蔵庫に向かい合って扉を開けたら、そこにあったのは小さなカップがひとつ。
「あ、プリンだ。銀ちゃんの?」
両手一杯の食糧を冷蔵庫につっこんでからその小さなカップを手に取る。
大きな声で居間に向かって声をかけたら、おーうと間の抜けた声が返ってきた。
「それなァ、昨日ひとつ食ったんだ。美味かったからもう一つはに置いといた。食っていいぞー」
「ほんと? やったあ、ありがとー」
冷蔵庫を閉めたその足でスプーンを一本とって、いそいそと居間へ戻る。
銀ちゃんはいつものところに座ってて、あたしはソファに腰を下ろした。
蓋をめくると、ぺりりと軽快な音。甘い香りに思わず笑みが漏れた。
「美味しそうだね、銀ちゃん」
「だから言ってンだろ、美味いんだってば」
「そうだったねえ…」
銀ちゃんが置いといてくれたプリンは、すっごく甘くておいしかった。
こんな日常。珍しくもない、昼下がり。
これからもきっと、こんな日が続いていくに違いない。
「あ、そうだ。ねえ銀ちゃん」
「んー?」
「外ね、雪降ってたよ! もう春なのにね」
おかえり、
また君に会える
(08/03/01 雪ネタできなかったはらいせ(笑))