もういい加減 泣き止んでもいいころなのに
私の彼はまだ泣いてる
…もう、いい加減、大人なんだから、映画見て泣かないで欲しい。
「ねえ土方さん」
「何だ、どうした。(ぐすッ)」
「そんなに感動的でしたか、あの映画…」
「ばか、オメー、あの良さがわかんねえのか…!」
「や…わかりますけど…でもそんな号泣するほどいいかどうかって聞かれたら…何ていうか、その…」
土方さんは信じられないとかどうとかうだうだ云ってるけどもう聞き流す。
ただでさえ土方さんみたいな男前と歩いて、こんなに注目されてんのに
泣かれちゃ尚更だ。 なんか私が泣かせたみたいじゃないってこれ、普通男の人が思うことじゃん…!
そんな罪作りな私の彼、余韻もそろそろ薄れてきたみたいで、アーだとかなんとかうなった後、煙草を咥えて火をつけた。
煙が風に乗って流れてゆく。まるで土方さんみたいだ。掴めそうで、掴み所のない所が。
普段は真選組で、人をばっさばっさ切ってるのに、あんなやっすいラブロマンスで泣く辺りわからない。
ほんとは凄く優しくて、人をちゃんと思いやれる人なのに、ああキツイ顔だから怖がられる。
鬼の副長、なんてよく言ったもんだ。ちゃんと掴ませてくれないから、表面だけの印象が残る。
でも、こんなに心の優しい鬼、どこ探したって居ないんだよ。
「ねえ 土方さん」
「何だ」
「笑ってください」
「……突然言われてはいそうですか、じゃあって笑えるほど器用な男に見えるか、俺が」
「だって土方さん、いい人なのに。鬼だとか怖いだとか、言われたままじゃ悔しいです」
「オメーが悔しがってどうすんだ。 俺ァいいんだよ、此の侭で」
「やです。悔しいもん。土方さんが嫌な人って思われたままなんて嫌だ。」
「イイんだっつーの。俺がイイっつーんだから納得しとけ」
「だって、笑ったらもっと、きっと皆わかってくれ…」
「解って貰おうなんて思ってねーよ。 解る奴だけついて来れば俺ァそれで満足だ」
こんなカッコイイ事、言ってキマるのだって、土方さんだからこそなのに。
(でもそんな土方さんを知ってるのは、今のところ私だけなんだ。)
オンリーユー、
オンリーミー
(06/09/18 私だけってとこにミソがあるんです。)