わたしは頬杖をついて窓の外をぼんやり眺めた。

今日も江戸の空は絵の具を零したみたいにどこまでも青色、そこに点点と浮かぶのは白い雲と天人たちの船。
ぴかぴかに磨かれたファミレスの窓にわたしの影が映り込んで、青色に透ける。このまま消えてしまうんじゃないだろうか、突拍子もなくそんなことを思う。

ぼんやりと外を眺めるわたしを盗み見ながら、向かい側に座った銀ちゃんがパフェを黙々と食べていた。
かちん、かちん。スプーンとガラスの器がぶつかって、独特の乾いた音が二人の間に響いてる。
わたしはその音が嫌いだ。でも、愛しい人の鳴らす音ならば何だってさほど苦にはならない。わたしのどこかがそんなことを考えていた。

窓の右端の方、混み合う建物の向こうに聳え立っているターミナルが薄く光を帯びて、どこかの星の誰かがまた地球へやってきたことを告げる。
別に天人を否定するわけじゃないし、むしろその技術のお陰で江戸が発展したことは評価しているけど、到来を告げたターミナルの輝きをわたしは喜ぶ気になれなかった。
かちん、また硬質のものが二つかち合う音がして、わたしは何気なく銀ちゃんのほうを見る。目があって、条件反射でわたしは笑う。

「すきだね、パフェ」

銀ちゃんもふわりと笑った。この笑い方はわたししか知らない笑い方。まるでお日様か何かみたいに笑うの。
わたしの言葉を肯定するときにだけみせる、笑い方。

「糖さえありゃァ何でもできるぞ、俺ァ」

「ふうん…、太るよ?」

「…」

「…おデブになった銀ちゃん、わたしは見たくないなあ」

「……」

「…あれ?実は結構気にしてたり?」

「……、うっせ! が何と言おうと俺ァ糖分摂取、やめねェからな!」

「だめだよ、そこそこにしないとホントに糖尿になっちゃうよ?」

没収ー、呟いてからわたしは銀ちゃんのパフェに手を伸ばす。
正確には、銀ちゃんのパフェについていた小さな苺に手を伸ばす(銀ちゃんの頼んだのはいちごパフェだから)。
それをつまんで口の中に放りこんで、手についたクリームを舐めようとすると、銀ちゃんの手がわたしの手首をつかんで、



それから、引き寄せられて、唇が触れて。
銀ちゃんの器用な舌がわたしの舌の上に転がってた苺を掠め取る。

唇を尖らせて銀ちゃんを見ると、回収ー、そう呟いて彼は笑った。




















それから

(09/03/26 これ実は、倉庫の中から発見しました。いつのだろ(笑))