銀ちゃんの声で目を覚ました。
あたしは泣いていた。
「なに泣いてんの、夢に化けモンでも出た?」
あたしを覗き込んで、銀ちゃんがにやりと笑う。
左右に首を振って、否定。涙が止まらなかった。
すると銀ちゃんは怪訝な顔になる。
「…じゃあなに、怖い夢じゃねえの?」
単純に怖い、とか、そういうのじゃ、なかった。
別に、お化けが出るとか、そういうことじゃない。
それは普通の日常で、新八くんも、神楽ちゃんも、土方さんも、お妙さんも近藤さんも沖田さんも、みんなが普通。
ただそこに、銀ちゃんだけがいなかった。
夢の中ではそれが普通で、誰も銀ちゃんのことなんかまるで知らないみたいで。
怖かった。悲しかった。そこに銀ちゃんがいないだけで、全部がぜんぶ、私の知らないものみたいだった。
そっと銀ちゃんの手を握る。
銀ちゃんはびっくりしたような顔をして、あたしをじっと見て。
「なに、どした。」
「いいから、このまま」
不本意そうに、銀ちゃんが唇を尖らせる。そしてしばらく沈黙。
あたしは銀ちゃんの指を、手を、撫でて、その存在を確かめて、それから銀ちゃんをじっと見た。
「銀ちゃん、しんじゃやだよ」
面食らったような銀ちゃんは、「縁起わりいこと言うな、ばか」そう言ってあたしを抱きしめた。
そこにきみがいるだけ
(08/09/10 超ひっさしぶりの更新だぜ(…))